遺言の検認を受けなかったら? 検認を受けなかった遺言について気になる点を解説

遺言

遺言が見つかったら,必ず家庭裁判所で検認を受けてください。」って,いろいろなサイトに書いてありませんか?

見つかった遺言書は家庭裁判所で検認を受ける,ということは民法で定められています。(民法千四条
封印がある遺言書を検認しないで開封したり,検認しないで遺言を執行したりすると,五万円以下の過料に処せられます。(民法千五条

とは言え,全ての遺言書を検認しなければいけない,という訳ではありません。

では,どんな遺言書は検認が必要なのか,検認しなかったらどうなるのか,今回はその辺について説明します。

検認とは何をするのか?

そもそも,家庭裁判所で行う「検認」とは,いったいどんな手続きなのでしょうか。
裁判所のホームページには,次のような記載があります。

「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
(裁判所ホームページより引用)

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html

ここには3つの効果と1つの注意点が書かれていますね。

 検認の効果
  ・相続人に遺言書の存在と内容を知らせる
  ・検認の日における遺言書の内容を明確にする
  ・遺言書の偽造・変造を防止する
 注意点
  ・遺言書の有効・無効を判断する手続きではない

まず検認の申し立てをすると,相続人全員に検認を行う日が通知されます。
検認の申し立ての手続きには相続人全員の戸籍が必要です。その戸籍の住所から全相続人に知らせが届きます。
検認の当日,相続人の立会いの下,裁判官が遺言書を検認し,遺言としての最低限の形式が整っているかどうかを確認します。
封印のある遺言書は,その場で初めて開封されます。
そして検認が終わると,遺言書に「検認済証明書」が添付されます。
この一連の手続きで,遺言の検認となります。

注意点としては,検認が終わって検認済証明書が添付されたからと言って,遺言書の内容が有効ということではない,ということです。
検認では遺言の形式しか見ませんので,遺言書の内容については保証の限りではありません

検認しなければいけない遺言とは?

一般的に作成される遺言には,次の四種類があります。

 ・自筆証書遺言(遺言者自身で保管する)
 ・自筆証書遺言(法務局で保管する)
 ・公正証書遺言(公証役場で保管する)
 ・秘密証書遺言


この中で検認が必要な遺言書は次の二種類です。

 ・自筆証書遺言(遺言者自身で保管する)
 ・秘密証書遺言

法務局で保管する自筆証書遺言と,公証役場で保管する公正証書遺言は,偽造・変造の心配がないので検認は不要です。
検認しなくていい分,早く遺言執行ができますね。

検認しないとどうなる?

最初に書いた通り,検認が必要な遺言書(自筆証書遺言や秘密証書遺言)を検認しなかった場合,五万円以下の過料に処せられます。
とは言え,検認しなければ遺言書が無効になる,というわけではありません。
形式が整っている遺言書は,検認の有無にかかわらず有効な遺言です。

「それなら,手間をかけて検認しなくても問題ないのでは?」

・・・と思いますよね。

遺言書の検認申し立てから検認済証明書が発行されるまで,約一ヶ月かかると言われています。
もしかしたら,検認を受けずに急いで遺言を執行したい場面があるかもしれません。
※検認しなくていい,と言っているわけではありませんよ。検認は「義務」ですからね。

では,遺言書を検認しなかったら,過料以外に何が問題になるのでしょう。

・・・実は,検認を受けないと,遺言書を根拠にした遺産分割ができないかもしれないのです。
「かもしれない」というより実質不可能になります。

遺産分割では,預貯金などの金融資産と土地や家屋などの不動産が主な相続財産になると思います。
遺言書(自筆証書遺言や秘密証書遺言)を根拠とする相続手続きでは,不動産の所有権移転登記や預貯金の解約手続きなどの実務上,遺言書と一緒に検認済証明書の提出を要求されるのです。
つまり,検認を受けない遺言書では相続手続きが進められないことになります。

そりゃそうですよね。

「偽造・変造されていない」というお墨付きがない遺言書では,大事な相続財産を動かす根拠にはできません。

ちなみに

自筆証書遺言に「封印」は必須ではありません
民法には「封印しなさい」とは書いていないのです。
封印があってもなくても,自筆遺言書としては正しい形式になります。
ですので,封印の有無にかかわらず,自筆遺言書が見つかったのであれば家庭裁判所に検認を申し立てなければいけません。

「封印もない遺言書だし,まぁいいか検認しなくても。」

・・・てなことを言って検認しないと,五万円以下の過料ですよ。
相続手続きもできませんし。

いかがですか。
自筆証書遺言と秘密証書遺言に検認が必要な理由,お分かりいただけましたか?
検認が必要な遺言書は,検認のために相続手続きの手間が増え,時間も余計にかかりますが,
くれぐれも「検認は義務」であることを忘れないでくださいね。

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