相続が発生して、できるだけ早くしなければいけない事の中に、遺言書の探索があります。
遺言書の有無によって、その後の相続手続きが大きく変わりますので、できるだけ早く探し出したいのですが・・・
やっと見つかった遺言書、中に何が書いてあるのか、すぐにでも確認したい気持ちは分かりますが、封印された遺言書を見つけてもすぐ開封してはいけない、という事をご存じでしょうか。
見つかった遺言書はどのように扱うべきなのか、もし開けてしまったらどうなるのか、わかりやすく説明します。
見つかった遺言書の扱い方
まずは検認が必要
相続が発生した時、できるだけ早く遺言書を探索するというのは先ほどもお話ししました。
どこを探すか・・・については、別のブログに書いていますので参照してください。
今回は遺言者(亡くなった方)が書き残した自筆証書遺言が見つかった前提でお話を進めます。
自筆証書遺言が見つかった場合、まずは家庭裁判所に連絡して、遺言書の検認を行います。(民法千四条)
検認・・・聞きなれない言葉ですね。
検認を簡単に説明すると、「家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認し、その時の状態を保存する手続き」となります。
家庭裁判所に検認の予約と取るところから始まり、実際に検認が終了するまでに1~2か月、長いと6ヶ月ほどかかることもあるようです。
検認の期間中にはできない相続手続きもありますので、できるだけ早く検認する必要があります。
検認を受けないとどうなる?
もし検認を受けずに遺言書を開封したらどうなるでしょう。
検認は、遺言書が改変されていないことを家庭裁判所で確認する手続きですので、検認を受けない遺言書はその後の相続手続きで影響を受けます。
例えば、検認を受けない遺言書は、他の相続人から遺言書の偽造・変造を疑われることもあります。
また、検認を受けないで遺言書を開封すると、5万円以下の過料が課されることもあります。(民法千五条)
何より、不動産の名義変更や預貯金口座の名義変更・解約などの場面では、検認を受けた遺言書が相続手続きの根拠として求められます。
つまり、検認を受けない遺言書は相続手続きに使えなくなってしまう、という事です。
せっかく遺してくれた遺言書が相続手続きで使えなくなってしまうのは、とても残念なことです。
遺言書の検認の流れ
では実際、どのような手順で遺言書の検認が行われるか確認します。
家庭裁判所に検認の申し立てをする
遺言書を保管していた人か遺言書を発見した人が、家庭裁判所に遺言書の検認を申し立てます。
申し立てる家庭裁判所はどこでもいい訳ではなく、遺言者(亡くなった方)が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所になります。
その時に必要な書類は次のとおり。
・検認申立書
・遺言者が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
他の書類が必要になる場合もありますので、詳細は家庭裁判所に確認してください。
検認期日が通知される
提出した書類に不備がなければ、後日家庭裁判所から相続人全員に検認を行う日(検認期日)が通知されます。
検認を申し立てた日に検認が行われるわけではありませんので、気を付けてください。
検認期日
検認期日に、申立人と相続人が家庭裁判所に出向き、裁判官が遺言書を開封して状態を確認します。
申立人は必ず出席しなければいけませんが、他の相続人に出席の義務はありませんし、欠席しても罰則等はありません。
欠席した相続人には、後日検認の終了通知が送られてきます。
検認済み証明書の申請・受取
検認が終わったら、検認済証明書の申請を行います。
申請すると、検認済証明書が付いた状態の遺言書が申立人に返却されます。
検認に要する期間
検認は、申立人が戸籍などの書類を準備するところから始まります。
そして家庭裁判所に検認を申し立ててから検認手続きが終了するまでには1~2ヶ月かかると言われていますが、稀に6ヶ月以上かかった事例もあるそうです。
その後の相続手続きにも影響がありますので、できるだけ早く検認を行ってください。
検認した遺言書が有効という訳ではない
ここまで来て、ちょっと残念なお話です。
手間暇をかけて検認した遺言書ですが、その後の相続手続の根拠になりえるか・・・というと、必ずしもそうとは限りません。
家庭裁判所での検認とは、じつは「検認した時の遺言書の状態や内容を保全する」ことなのです。
つまり、検認で持ち込まれた遺言書が偽造・改変されていないことを確認して、検認した時の状態を保全する、というのが検認になります。
さらに言えば、検認を受けた遺言書であっても、内容が法的に正しいかどうかは別問題、という事です。
これは、自筆証書遺言のデメリットの一つですね。
法務局に預けた自筆証書遺言も同じで、改変されていない事は保証できますが、その内容までは保証されていないのです。
封印がない遺言書に検認は必要か
封印していない遺言書は中身が丸見えで、一見すると検認は必要なさそうですが・・・
実は封印があろうとなかろうと、相続開始後に見つかった遺言書は検認を受けなければなりません。(民法千四条)
遺言書の検認について、民法では封印の有無を区別していないのです。
封印がないから検認はいらない、と決めつけず、遺言書が見つかったら必ず検認を受けてください。
まとめ
できるだけわかりやすく遺言書の検認について説明してみました。
相続が始まって遺言書が見つかったときは、はやる気持ちを抑えて、決して開封せず、できるだけ早く家庭裁判所に検認を申し立ててください。
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