遺産分割でもめているドラマなんかで「俺にも遺留分があるだろう!」なんて言うセリフ,聞いたことはありませんか?
・・・すいません,ちょいちょいドラマや映画を引き合いに出してしまって。
ドラマはともかく,遺留分という言葉は聞いたことがありますよね。
では,遺留分って何でしょう?
相続がらみのシーンで使われる言葉ですので,遺産の取り分かな?と思っていませんか?
・・・正解です!
簡単に言うと,相続財産のうち相続人が必ず受け取ることができる割合のことを言います。
これを見て「相続人なら必ず相続財産がもらえるのか」と思ったあなた。
ちょっと惜しいです。
相続人でも遺留分の権利がある人とない人がいるんです。
では,誰が遺留分の権利があるのか,そもそも遺留分とはどんな制度なのか,説明していきます。
遺留分侵害請求権
一般的に「遺留分」と言ったりしますが,正式には「遺留分侵害請求権」と言います。
この「遺留分侵害請求権」がどんな権利かというと
「相続人に保障されている,相続財産を受け取る最低限の割合。(民法千四十二条)」
という事になります。
例えば,相続財産の全部を長男に相続させるという遺言があったとします。
遺言の内容に納得できない次男が遺留分侵害請求権を行使すると,相続財産の一定割合を受け取ることができるようになるのです。
この権利のことを「遺留分侵害請求権」といいます。
遺留分減殺請求権
今は「遺留分侵害請求権」と呼ばれていますが,2019年の法改正前は「遺留分減殺請求権」と呼ばれていました。
遺留分侵害請求権と遺留分減殺請求権,似たような言葉ですが,内容は大きく変わっています。
法改正前までの「遺留分減殺請求権」では,権利を行使して得られる相続財産は,基本的に現物でした。
例えば相続財産が土地だった場合,遺留分減殺請求権を行使すると原則として土地の一定割合の権利を取得することになっていました。
これに対し,法改正後の「遺留分侵害請求権」では,現物ではなく土地の一定割合の権利をお金に換算して,現金で支給することになったのです。
現在は法改正されていますので,「遺留分侵害請求権」の方法で権利を行使することになっています。
誰が遺留分侵害請求権利者になれる?
先ほど,相続人でも遺留分の権利がある人ない人がいる,という事を書きました。
では,誰が遺留分侵害請求権を行使できるのでしょう。
被相続人(亡くなった方)に対して,法定相続人は
1.配偶者
2.第一順位の相続人(子や孫などの直系卑属)
3.第二順位の相続人(父母や祖父母などの直系尊属)
4.第三順位の相続人(兄弟姉妹)
となっていますが,この中で遺留分侵害請求権利者になれる法定相続人は「第三順位の相続人(兄弟姉妹)以外」と決まっています。(民法千四十二条)
配偶者と直系血族である子,親には遺留分侵害請求権がありますが,傍系血族の兄弟姉妹には遺留分侵害請求権がないのです。
法定相続人になっていることと遺留分侵害請求権があるかどうかは別の話ですので,気を付けてください。
遺留分侵害請求権の割合とは?
配偶者,子,親の遺留分侵害請求権の割合は,相続財産の1/2に法定相続分をかけた割合に当たります。
ただし,例外的に法定相続人が直系尊属だけの場合は,相続財産の1/3に法定相続分をかけ割合となります。
例えば,遺言に全財産をどこかの団体に寄付すると書かれていたとします。
その時に各相続人は,その団体に対して所定の割合で遺留分侵害請求権を行使できます。
例1)法定相続人が配偶者だけの場合
配偶者は相続財産の1/2に法定相続分を掛けた割合で遺留分侵害請求権を行使できます。
この場合,配偶者には相続財産すべての相続権がありますので,相続財産の1/2に対して遺留分侵害請求権を行使できます。
例2)法定相続人が配偶者と子の場合
配偶者と子は全相続財産の1/2に法定相続分の1/2を掛けた割合で遺留分侵害請求権を行使できます。
つまり,配偶者は1/2×1/2=1/4,子は1/2×1/2=1/4となります。
子が複数人いる場合は,1/4を子の人数で割った分が遺留分侵害請求権となります。
例3)法定相続人が配偶者と父母の場合
配偶者と父母は全相続財産の1/2に法定相続分のそれぞれ2/3,1/3を掛けた割合で遺留分侵害請求権を行使できます。
つまり,配偶者は1/2×2/3=1/3,父母は1/2×1/3=1/6(父母はそれぞれ1/12)となります。
例4)法定相続人が父母のみの場合(この場合だけ例外です)
法定相続人が父母や祖父母などの直系尊属のみの場合,全相続財産の1/3に法定相続分を掛けた割合で遺留分侵害請求権を行使できます。
この場合,直系尊属には相続財産すべての相続権がありますので,相続財産の1/3に対して遺留分侵害請求権を行使できます。
遺留分侵害請求権は行使してもしなくてもいい?
遺留分侵害請求権は,その名の通り「権利」です。
権利を行使するかどうかは相続人本人の意思次第ですので,必ず遺留分侵害請求権を行使しなければならないという事ではありません。
遺言の内容に納得しているので遺留分侵害請求権は行使しない,というのも権利者の選択です。
遺留分侵害請求権の時効
遺留分侵害請求権には時効があります。
1.相続の開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年
2.相続開始のときから10年
このいずれか早い期間で権利が消滅します。(民法千四十八条)
遺留分侵害請求権を行使したいのであれば,相続の開始と遺留分侵害があったことを知った時から1年以内に権利を行使しなければいけません。
もし相続が始まったことや遺留分侵害があったことを知らなかったとしても,相続開始から10年が経過すると,やはり権利が消滅します。
ちなみに,相続開始から9年6か月目に,自分が相続人になっていて遺留分があったとこを知ったとしても,そこから1年間権利が行使できるわけではありません。
相続開始から10年の時効に引っ掛かりますので,半年しか権利を行使できる期間がないことになります。
遺留分侵害請求権は,どうやって権利行使する?
遺留分侵害請求権という言葉だけを見ると,権利を行使するためには「裁判所で何か手続きをしないといけないのでは?」と思いますよね。
ところが権利を行使するだけでしたら,案外簡単に行使できます。
口頭,電話やファックス,手紙などで権利行使する旨を伝えるなど,相手に権利行使する意思が伝われば成立します。
「え?そんなに簡単なの?」
そんなに簡単なんです。
もちろん「言った・言わない」の水掛け論にならないよう,内容証明郵便などを使う必要がありますが,それでもこちらの意思が相手に伝わりさえすればいいのです。
遺留分侵害請求の意思が相手に伝われば,後は話し合いで円満に解決すればいいのですが,話し合いで解決できない時は家庭裁判所に調停を申し立てる,遺留分侵害請求の訴訟を起こす,といった方法で解決を図ります。
いかがですか。
何となく聞いたことがある遺留分ですが,だいぶはっきりしたと思います。
相続は円満に進められるのが一番ですが,どうしても納得できないことがあるときは,相続人の権利として遺留分侵害請求権を主張するのも一つの手段ではないでしょうか。
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コメント
Good article.